STORY vol.01

「あっという間の20年」社長×小豆農家×和菓子職人~北海道 どら焼きヌーボーに込められた想い~

2024

~北海道・十勝から~

辻野さんの新小豆100%を使った「北海道 どら焼きヌーボー」への想いを語る



農業とお菓子づくりは密接に結びつくもの。会いに出掛けたのは、北海道十勝芽室町の小豆農家・辻野さん。「北海道 どら焼きヌーボー』(以下『どら焼きヌーボー』」の新小豆を生産していただいて、今年で20年目になります。

もりもと代表取締役社長・森本真司と和菓子職人・佐野健太、そして辻野さんの3人が語る、「北海道 どら焼きヌーボー」の原点や想いとは?


小豆生産者・辻野俊弘さん:もりもとに小豆を届けて今年で20年目。愛情込めて「エリモショウズ」を生産。
もりもと代表取締役社長・森本真司:2018年に株式会社もりもとの代表取締役社長に就任。「どら焼きヌーボー」立ち上げの立役者の一人。

和菓子職人・佐野健太:もりもとの餡場を任され、小豆と餡への情熱を語り出すと止まらない餡職人。



「どら焼きヌーボー誕生秘話」―新小豆の可能性を見つけた出会い


森本
「20年、本当にありがとうございます、辻野さん。
僕らが企画を立てたとき、『どら焼きヌーボー』という、穫れたての小豆を使った新しいどら焼きのアイデアがうまれたんです。「これは面白い企画だな」と思って、すぐにその話を持ち込んでもらったんですよ。最初は「本当にできるかな?」なんて思ったんですけど、幸運なことにちょうどタイミングも良くて、辻野さんを紹介してもらえたんです。」

辻野さん「いろいろなところを経由して、豆問屋さんを通じて、もりもとさんに話が繋がったんだ。それが『どら焼きヌーボー』へと発展したんだよ。」


森本「本当にタイミングがバッチリだったんですね!」


辻野さん「お父さん(現森本吉勝相談役)も何度も来てくれて、熱心だったよ。」


森本「相談役はとにかく素材にこだわるんです。おいしいお菓子を作るには、最高の素材が必要だって信念を持っていて。プリンでもゼリーでも、何を作るにしても素材が第一。だから、どら焼きもちゃんと良い素材で作りたいということで、辻野さんの小豆に出会えたのが大きかったんです。そして、こんなに長く続けられているのは本当にありがたいですね。」


辻野さん「もう20年になるんだなぁ。」


森本・佐野「本当にすごいことです。続けていただけて本当に感謝しています。」




「小豆は生きている」―毎年変わる小豆の状態


森本「毎年毎年、小豆の状態が変わるんですよね?」


佐野「そうですね、変わります。」


森本「お客様も『どら焼きヌーボー』を毎年楽しみにしてくださっているじゃないですか。去年の味を覚えているお客様の期待に応えないといけないって、やっぱり大変?」


佐野「大変ですけど、やりがいがありますね。辻野さんの小豆は天候によって多少違いはありますけど、それをどうやっていつもの味にするかが勝負。炊き時間や調整に手間がかかるし、でも自分たちも毎年腕を磨くことを目指して、技術と経験で対応しています。毎年、同じ美味しさを維持するっていうプレッシャーはありますけど、そこが面白いところでもあります。「毎年違うから、味も違うじゃん」という風にはならないように心掛けています。」


森本:「やっぱり、小豆の状態を見て、話を聞いて、その年に合わせた調整をするのが続けられる秘訣かもしれませんね。」




「大自然と戦う」―芽室町の大雨被害


佐野「去年は記録的な猛暑で収穫にも影響があったと聞きましたが、他にもこの20年の間に「この年は本当に大変だったな」と感じた時期ってありましたか?」


辻野さん「あまり昔のことはよく覚えていないけど、天気が悪くて長雨が続いたときは大変だったな。畑の雑草がすぐに伸びるからね。雨がさっと降ってすぐ止めば、機械で除草ができるけど、長雨だと畑が乾燥せず、作業ができなくなるんだ。」


森本「ありましたね。あれは2016年か2017年頃じゃなかったですか?大雨で芽室町が大変なことになって。しかも収穫直前だったんですよね。」


辻野さん「ありましたね、あの時は本当に大変でした。」


佐野「もう収穫間近だったんですよね、『あと少しで収穫だね』って言っていた矢先に、その後に大雨が来たんですよね。」


森本「橋も流されて、工場も被害を受けてましたよね。あの年は小豆の収量がだいぶ減ったんじゃないですか?」


辻野さん「そうですね、芽室のスイートコーン工場も水に浸かって、大打撃でした。」


森本「特に収穫時期にこういう災害があると、被害が大きくなりますよね。でも、そんな経験があったからこそ、天候に左右されても美味しい小豆を作る技術が磨かれたのでは?と思います。」


佐野「本当にその通りですね。」


辻野さん「いいときもあれば悪いときもあるけど、もりもとさんの「どら焼きヌーボー」に使う小豆の量をちゃんと確保できたことが一番の誇りだよ。」


森本・佐野「(笑)本当に。ありがたいですね。」



「偶然の出会いから20年」―継続の原動力とは


森本「もう20年も続いてるんですよね。当初、辻野さんが『そんなに長く続けられるかどうか分からないよ』っておっしゃってたのを覚えています。でも、気がつけば20年。何が続ける原動力になっているんですか?」


辻野さん「うちは1999年まで牛専業だったけど、大変なことも多くやめて、そこから小麦と小豆しか作ってないんです。小麦も同じ場所に何年も続けて撒いて、その後に小豆を撒く。だから、作った小豆が喜んで、また来年も作ろうって気持ちになるんです。もりもとさんが毎年小豆を使ってくれるのも大きな励みになってます。」


佐野「もう、辻野さんの小豆とどら焼きはセットみたいになっちゃってますよね。」


森本「そうなんですよね。お客さんも全国で楽しみにしてくれてますから、次の世代にどう引き継いでいくかを考えないといけないですね。」


辻野さん「そうですね、若い後継者たちがどんな風に小豆作りを受け継いでくれるか、今後が楽しみです。」




「小豆から生まれる感動」―職人たちの想いが詰まった餡

森本「毎年、小豆が届くと気が引き締まるんじゃないですか?」


佐野「そうですね、辻野さんが収穫した小豆を豆問屋さんが選別をし、小豆が入った袋を開けた瞬間にスイッチが入ります。小豆の出来を見ながら、どうやって今年の餡を作るかって考えます。自分の技術だけじゃなく、若いスタッフにもその想いや経験を伝えていくのが自分の使命だと思っています。」

森本「毎年、短い期間で完成させるのは、本当に大変ですよね。発売日も決まってますし。」


辻野さん「大変なお仕事だと思います。」


佐野「いやいや、お互い様ですよ。」


森本「去年は私もちょっとびっくりしたんだけど、試作1回目で『あ、いいな』と思ったんですけど、佐野は『いや、もっと良い味を作れます!』と言ってくれて、以前はそれを言うのは私の方だったのに。」


佐野「ありがとうございます。今年も最高のどら焼きを作るつもりです。」


森本「こうやって継続してきたことがお客様に評価されて、今では解禁を心待ちにしてくださる人も増えて、というのが本当にありがたいです。」


辻野さん「長く使ってもらえて本当にうれしいです。」




「感謝の20年」―お客様との絆が紡ぐ未来


森本「いい素材を使えば、いいものができるっていうのは当たり前かもしれませんが、先代からもりもとが長くそういった取組みを行ってきて、今でもずっとそのこだわりがあります。毎年、直接農家さんと深く関わって、最高のものを作り続けるっていうのは本当に特別な経験でした。お客様が毎年楽しみにしてくれる『どら焼きヌーボー』も、その結晶だと思っています。」


佐野「自分たちも、この小豆を活かす責任を感じています。だから、絶対においしいものを作るっていうスイッチが入りますね。」


辻野さん「もりもとさんのどら焼きは、期間限定だからこそ特別感があるんです。1年間でたった1カ月しか作っていない。それがいいんじゃないかと思います。」


森本「お客様もその限定感を楽しみにしてくれてるんですよね。これからも感謝の気持ちを込めて、『どら焼きヌーボー』をお届けしたいと思います。」