

STORY vol.04
STORY - vol.04「北海道で育ついちごへの挑戦」 ~苫東ファーム インタビュー~
~北海道・苫小牧から~
苫東ファーム 生産者へインタビュー
北海道に咲くいちご ~寒さを乗り越えるいちご栽培~
北海道苫小牧市に位置する苫東ファームは、北海道の厳しい寒さの中で不可能と言われた「真冬から春にかけてのいちご栽培」に挑戦し続けています。
春に収穫されるいちごは、寒暖差の影響で甘さがぐっと引き立ち、果肉もしっかり締まっていてとびきりジューシー。その特別なおいしさをもっと多くの人に知ってもらいたいという想いから、最先端のオートメーション技術と、熟練の人の手仕事を組み合わせ、スタッフ一人ひとりが手間を惜しまずいちごと向き合っています。
>苫東ファーム 生産部 担当部長
山本 雄二(やまもと ゆうじ)さん
■口いっぱいに広がる感動~過酷な北国の環境下における最先端技術~
Q:苫東ファームのいちごは、どのような味わいが特徴ですか?
山本さん「私たち苫東ファームで生産するいちごは、口に含んだ瞬間にみずみずしい果汁があふれ、濃厚な甘みとほのかな酸味が絶妙に調和しているのが特徴です。」
Q:その絶妙な味わいの秘密は、どのような理由から生まれているのでしょうか?
山本さん「実は、北海道ならではの昼夜の寒暖差が、いちごの甘みを際立たせる最大のポイントです。昼間はたっぷりの太陽の光を浴びて光合成を活発にし、夜には気温がグッと下がることで、いちごが糖分を蓄えやすくなります。この寒暖差が、濃厚で甘みの強いいちごを生み出す秘訣なんです。
さらに、この寒暖差のおかげでいちごの果肉が引き締まり、噛んだ瞬間にジューシーな甘さが口いっぱいに広がる食感も実現しています。
苫東ファームでは、品種ごとに最適な管理方法を導入し、北海道の気候を最大限に活かしています。」
山本さん「苫東ファームのハウスは、横200m、縦100mのハウスが2棟と国内最大の規模を誇ります。その中でいちごが元気に育つよう、さまざまな技術を駆使して環境を整えています。たとえば、環境制御コンピューターを活用し、昼間は25~30度、夜間は5~6度に温度管理。夜の寒さを上手く利用して、いちごが甘さを蓄えられるようにしているんです。」
山本さん「冬場は27台のガス加温機を動かし、さらに保温カーテンを活用して、エネルギー効率を高めながら最適な環境を維持。光合成を促すための二酸化炭素供給や、受粉のタイミングの調整など、細かいところまで徹底的に管理をしています。
さらに、土ではなく養液栽培を採用することで、いちごに均等に栄養が行き渡り、味のバランスがとれた高品質ないちごを育てることができるんです。」
山本さん「さらに、手作業によるいちごの状態チェックや、最適な収穫タイミングの見極めなど、スタッフ一人ひとりの熟練した技が必要です。これらの苦労は大変ですが、『不可能を可能にする』という強い信念のもと、日々挑戦を続けています。」
■スピーディな輸送体制~北のアトリエとの連携で鮮度キープ~
Q:収穫されたいちごは、どのようにして北海道ヌーボーのお菓子が作られている北のアトリエ(北海道千歳市)に運ばれているのでしょう?
山本さん「いちごは収穫した瞬間が一番糖度が高く、収穫した後は追熟しない果物です。そのため、おいしさにおいて鮮度はとても重要なポイントとなります。苫東ファームと北のアトリエの距離は車で約35分と非常に近いため、収穫直後の完熟状態と新鮮な風味をそのまま届けることができる、とてもよい条件が整っています。
収穫後、すぐに北のアトリエにバトンを渡すことができる、この迅速な輸送体制と徹底した品質管理が、北海道産いちごの魅力を最大限に引き出したお菓子を作る一助となっているのではないかと考えています。」
■苫東ファームの成り立ち~挑戦の始まりと地域への想い~
Q:苫東ファームはどのような経緯で設立されたのでしょうか?
山本さん「苫東ファームは、国の次世代施設園芸加速化支援事業の一環として約12年前に設立されました。当時、北海道の冬から春にかけていちごを栽培するのは非常に困難で、市場には主に道外産のいちごが流通していた状況でした。しかし、『北海道産のいちごを一年中楽しんでほしい』という強い想いから、この挑戦に乗り出しました。苫小牧は工業都市としても知られていますが、農業の振興を通じて地域全体に安心して働ける環境を提供することも、私たちの大切な使命です。」
■最先端のオートメーション技術と、熟練の人の手仕事
Q:苫東ファームは最新のオートメーション技術を導入した大規模な農業施設ですが、一方でたくさんの方が働いている姿を目にします。やはり最後は人の手で、ということなのでしょうか?
山本さん「いちごはすごくデリケートな果物で、ちょっとした傷でも品質が落ちてしまうんです。だからこそ、苫東ファームでは収穫時から選果場に至るまで、人の手で一粒一粒を手作業で確認し、病気や傷のあるものは取り除いています。」
山本さん「年間で200トンのいちごを出荷していますが、そのすべてが厳しい品質チェックを通過したものです。私たちはただいちごを育てるだけではなく、お客様に最高の品質を提供することを大切にしています。」
山本さん「とくに苦労するのは手入れ作業です。いちごは葉っぱの枚数が多く、葉を取り枚数を減らして環境の良い状態にする、というのがとても大切で、大変な作業です。この手入れ作業を工夫して丁寧に行うことで、いちごの収穫をしやすくしています。
また、パート従業員のモチベーション向上のため、売上データや生産状況を共有し、自分たちの仕事の成果を実感できる環境を整えています。自分たちが育てたいちごがどのように商品化されるのかを知ることで、より丁寧な作業に繋がっています。」
■未来への展望~さらなる挑戦と発展を目指して~
Q:これからの苫東ファームの展望や、今後の目標についてお聞かせください。
山本さん「北海道産いちごのブランド力を向上させるため、イベント出展などにも力を入れています。まだまだ『北海道=いちご』というイメージは浸透していませんが、技術と工夫次第で全国に誇れるいちごが作れることを広めていきたいです。
また、さらなるブランド化に向け、新たな品種開発にも挑戦しているところです。より美味しく、輸送性にも優れたいちごを生産することを視野に入れています。研究と実験を重ね、北海道ならではのいちごを生み出すことが、私たちの次なる目標です。」